「プリンシプルがある男」より「プリンシプルがない男」を目指せ!【適菜収】 連載「厭世的生き方のすすめ」第22回
【連載】厭世的生き方のすすめ! 第22回
◾️マダムルミの魔法の手帳
私の知り合いにマダムルミという女性がいる。あまりにも適当な人なので私は衝撃を受け、『マダムルミの魔法の手帳』『マダムルミの秘密のレシピ』という本を企画したことがある。私が好きな彼女のツイートをいくつかピックアップしておく。
*
《ザ・たっちのいつも右にいるほうが好みだわ》
《ほしがりませんカツサンド》
《イーデス・ハンソンに「イーデスって呼んでいい?」って訊いたら、「イヤデス」と言われたわ》
《両国でちゃんこ鍋を食べたこともあるわ。あれは鍋に野菜や肉を入れるだけでしょ。頭を使わない料理だから相撲取りでもつくれるの。相撲取りにそういったらおこられたわ》
《世の中、簡単に答えが出ないことなんて山ほどあるわ。白身が先か黄身が先かって言うじゃない》
《地底人が悪さをしているという陰謀論者がいたから「それなら地底人は何人いるの」と訊いたら2000人だって。バカじゃないかしら。私の計算では3000人はいるわ》
《掃除をするときは、ティッシュペーパーを水で濡らして、ちょいちょいと拭いたりするといいのよ》
《料理の「かきくけこ」ってのがあるでしょう》
《大輪の花を咲かせるという言葉はあるけど、乳輪の花を咲かせるという言葉はないわ》
《鰻味の鯰というのが出たらしいの。だから、今度は鯰味の鰻をつくればいいと思うの》
《私、金さん銀さんを食事に誘ったことがあるの。なにを召し上がるって訊いたら、ソーセージを食べたいと。やっぱり双生児だと思ったわ》
《「レンジでは調理しないでください」と書いてある食品も、こだわらずにレンジで調理するわ》
*
私はこれまでズボラな生活を送ってきたので、これからは几帳面な人間になりたい。例えばどこかの企業の面接を受けたとして、「あなたの良いところはどこですか」と聞かれたら、「几帳面なところです」と答えたい。
*
インド人はいろいろ適当である。かつてのアジア諸国では電車やバスなどが遅れることがよくあった。インドはそのさらに上を行った。今ではさすがに改善されていると思うし、インドで聞いた話に過ぎないが、出発時刻の前に出発してしまうことがあるという。しかも1時間前とかに。適当すぎる。やはりインドにはかなわない。
*
若い頃は白黒をはっきりつけたくなる。グレーを許せない。しかし年齢を重ねると、世の中のほとんどはグレーでできていることが分かってくる。
*
自衛隊の存在もグレーになっている。普通に憲法を読めば、どう理屈をこねくり回そうが、自衛隊の存在は違憲である。よって、憲法を変えるか自衛隊を解体するかの二択しかない。だから憲法を改正するのは筋が通っている。しかし、日本がアメリカの属国である以上、改憲すれば都合よく使われるだけ。「白黒はっきりつけろ」というのが頭がプレーンな人たち。
*

白洲正子は夫の白洲次郎について、「まことにプリンシプル、プリンシプル、と毎日うるさいことであった」と回想している。白洲次郎は『プリンシプルのない日本』を書いた。日本は依然としてプリンシプルのない国であるが、そこらへんも適当でいい。プリンシプルがある国は脆い。
文:適菜収
- 1
- 2


-1-697x1024.jpg)


-697x1024.jpg)